傷つかないと生きていけない

生涯スポーツを始めたいと思って、最近ゴルフを始めた。私は中高とハンドボールをプレイしていたのだが、どう考えても60歳になってハンドボールはできない。だから、ゴルフかテニスをしようと思って、ゴルフを始めた。

 

自転車でゴルフ練習場に向かう際中、自転車の前輪にゴルフバッグが挟まったと思ったら見事に背負い投げされた。背負い投げと違う点があるとすれば、背中から受け身は取れなくて、気が付いたら出来の悪い土下座の態勢になっていたことだろう。何が起こったか脳では理解できなくても体はきちんと最低限の受け身を取ってくれる。今回の最低受け身は土下座。

一番痛い部分、右手の小指の付け根を確認して「皮膚ってこんな風にベロンと剥がれるんだな」と少し感心していたら血が溢れてきた。自分に子供ができたら自転車の前ブレーキを先にかけるんじゃないぞ!ときちんと教えようと思う。昔から肩掛けのカバンがうまく扱えない。何回か試行錯誤しないと正しい掛け方にならない。今回は「イマ、正しい肩掛けになってない気がするな」と思いながらチャリをふらふら漕いでたら盛大にこけたわけだ。

 

「なんか最低な日だな」なんて考えていた。転職して一年が経とうというのに、仕事がなくて毎日暇で、退屈している。仕事がないわけではない。上長が忙しすぎて指示が下りてこない。と思っていたら上長が気合いで仕事を片付けてしまう。私にもっと自主的に動ける能力があればいいが、そうもうまくいかない。そんなこんなで今日も悶々としていて、就業後に「せめてゴルフの練習してジムに行って資格の勉強しよう!」と考えていたら、ずっこけた。今日は帰って全部投げ出して寝てやろうかと一瞬思った。血だらけの手ではゴルフクラブダンベルも握れない。

 

ゴルフクラブダンベルも握れない?そんな訳はない。傷口にバンドエイドして上からテーピングを巻けばいいのだ。手が痛んだってクラブは振れるしダンベルは挙がる。今日は最低だったなんて思いながら一日を終えるくらいなら、血だらけになって「今日は頑張ったな」って思って終わる方がいいに決まってる。ほんの一瞬前までふらふらチャリを漕いでたはずなのに、怪我をして痛い、痛いと思っているうちに何故か気持ちが引き締まる。どろどろに溶けてしまった脳みそがハンマーでガン!と叩かれてすっきりと固形になったかのような衝撃。

 

私はどうやら適度に傷を負わないと、鋭く生きられないらしい。圧倒的不合理。究極に不幸を愛した生き方。最悪だ。でも、それに気持ちよさを感じている自分もいる。ヒロイック、それはある種のナルシズム。構わない。今から資格の勉強をして寝る。小指の付け根がどんどん腫れてきているが、ペンは握れる。